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クロム酸アルマイトの基礎技術-2

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前回に続いてクロム酸アルマイトの話をしたいと思います。今回はあまり一般的ではない材料へのクロム酸アルマイトとその前処理による耐食性の変化などについて紹介します。(1)

このシリーズではクロム酸アルマイトについて連載しています。

クロム酸アルマイトと前処理

クロム酸アルマイトなどのアルマイト処理はアルカリ溶液による脱脂工程を経て、デオキシダイズと呼ばれる活性化処理工程に入ります。通常、アルミニウムは表面に不動態皮膜がありますので、それをデオキシダイズ工程で除去します。

今回紹介する論文では、A7050材に対してクロム酸アルマイトを施すのですが、活性化処理で使用する薬液をクロム酸系デオキシダイザーで処理(デオキシ処理)した場合と硝酸によって処理した場合でどのような変化があるのか?というところを調べられていました。

耐食性試験

今回用いられていた耐食性試験はASTM ASTM G85-94という規格で、酸性側に寄せている塩水噴霧試験にて耐食性評価を行っていました。結果としては、デオキシ処理した場合のピットの深さが460μmであったのに対して、硝酸で処理した場合は30μmという結果でした。この結果から、耐食性は硝酸で処理したほうが高いと言えます。

また、腐食形態は主にピット状の腐食であったとありましたが、詳細はインターグラニュラーアタック、すなわち粒界腐食であったとのことです。

SEM image

著作権の関係上ここに画像は載せられませんが、SEM観察結果では硝酸処理に比べるとデオキシ処理の方が皮膜の粒子間に隙間が大きく空いていることが観察されています。これが耐食性を悪化させている原因のひとつであろうと述べられていました。

他の論文の調査によれば、アノダイズの成長は粒界に沿って早く成長するのに対してその他が遅くなるようです。この差により電界分布に偏りが生じ欠陥が生じやすくなるのではないかと言われています。

表面組成

XPSなどを用いた成分分析の結果では、硝酸とデオキシの処理に大きな違いが観測されたと報告されています。まず、違いがなかったのは銅やその合金などの成分については変化が観察されませんでした。しかし、表面の酸化状態には大きな差があり、硝酸処理ではデオキシ処理の約1/5の酸素量しかありませんでした。すなわち、硝酸での活性化処理では酸化皮膜が適切に除去されていたことがわかります。

この違いによって、被膜の形成に差を生じたため最終的に耐食性にも変化を生じた可能性があります。

私の考察

正直なところ、硝酸がこんなに優秀な前処理材と思いもしませんでした。むしろ、表面を酸化させるイメージがあったのでこの結果には驚きです。それに加えて、表面処理によって耐食性に大きな影響があるということは、アルマイトの前処理の選択は適切に実施しなければ耐食性、すなわち製品機能や寿命に影響を直接与える可能性があるということもわかりました。今度時間があれば前処理だけ集めた比較ができれば面白そうです。

他に、この論文では処理電圧によって耐食性が変化するのか?などの調査がされていましたが、思ったような成果が出ていないようです。今回は前処理によって耐食性に明らかな差が出ていたのでその紹介でした。

参考文献

(1) Q. Zhang, Materials Science and Engineering A280 (2000) 168-172

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クロム酸アルマイトの基礎技術-2」に2件のコメントがあります

  1. 初めまして。ブログランキングからきました。
    書かれている内容がとても難しいのですが、熱意が伝わります。
    応援しています。

    1. コメントありがとうございます。
      コメントいただければ励みなります。内容についてはちょっと反省するところがありますね。
      この分野の情報が少なすぎるのでもっとネット上にあればいいのに。ということから始めております。
      もっとわかりやすい情報についても掲載するようにします。
      またのお越しをお待ちしております。

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